芝生に雑草が生えてしまうのはよくある悩みです。せっかく美しい緑の絨毯を手に入れても、雑草が生い茂ってしまっては台無しです。雑草は、景観を損なうだけでなく、芝生の生育に必要な水分や栄養分を奪い、生育不良を引き起こす原因にもなります。 しかし、適切な対策を講じることで、雑草の発生を抑え、美しい芝生を維持することができます。
この記事では、芝生に生える雑草の種類、雑草対策の重要性、効果的な除草方法、そして芝生の生育を促進し雑草の発生を抑える方法について解説して行きます。
雑草対策の重要性
雑草は、見た目を悪くするだけでなく、芝生の生育を妨げる原因となります。雑草が生えていると与えた肥料の養分で勢いよく成長するため、芝生に養分が行き渡らず育ちにくくなるでしょう。 また、一部の雑草はアレロパシーと呼ばれる作用を持ち、他の植物の成長を阻害する化学物質を放出します。 このようなことから、雑草対策は芝生の美しさと健康を保つ上で非常に重要です。
雑草の種類
芝生に生える雑草は多岐に渡り、大きく分けて4つの種類に分類できます。
- 一年生イネ科: 春から夏の気温が高い時期に発生しやすい。オヒシバ、メヒシバ、シマスズメノヒエ、エノコグサ、イヌビエなど。繁殖力が強く、根が太くなる前に抜き取ったり、種を残す前に処理することが重要。
- 多年生イネ科: 種子で発芽し成長する。スズメノカタビラ、ススキ、メリケンカルカヤ、チガヤ、ドクダミなど。地上部分が枯れても地下部分が生き残り、翌年また同じ場所から生えてくる。刈り込みに弱いため、こまめな芝刈りで繁殖を防ぐ。
- 一年生広葉: ツユクサ、ブタクサ、トキソウ、カヤツリグサ、ヨモギなど。
- 多年生広葉: ハマスゲ、ヨモギ、ハルジオン、ヒメジオンなど。種類が多く、処理が最も大変な雑草。中でも「ハマスゲ」は、世界の強害雑草のトップに挙げられており、抜き取るだけでは完全に処理するのは難しく、強力な除草剤が必要となる。
芝生に生える雑草は多岐に渡り、以下はその代表的な例です。
- スズメノカタビラ
- メヒシバ
- オヒシバ
- シロツメクサ
- カタバミ
- コニシキソウ
- チドメグサ
- ツメクサ
- スギナ
- タンポポ
- ナズナ
- ホトケノザ
- ノボロギク
- オオイヌノフグリ
- オオアレチノギク
- ハルノノゲシ
- カラスノエンドウ
- ハマスゲ
除草方法
雑草の除草方法は、大きく分けて以下の3つの方法があります。
- 除草剤: 雑草の種類や生育状況に合わせて、適切な除草剤を選びましょう。
- 手作業での除草: 雑草の根を完全に取り除くためには、根こそぎ抜き取る必要があります。
- 物理的な防除: 防草シートや砂利を敷くことで、雑草の発生を抑制することができます。
除草剤の種類
除草剤には、大きく分けて以下の2つの種類があります。
- 選択性除草剤: 特定の種類の植物だけを枯らす除草剤。芝生に影響を与えずに雑草だけを枯らすことができます。
- 非選択性除草剤: すべての植物を枯らす除草剤。
選択性除草剤は、さらに作用機序によって、茎葉処理剤と土壌処理剤に分けられます。
- 茎葉処理剤: 雑草の葉や茎に散布することで、吸収されて効果を発揮する除草剤。
- 土壌処理剤: 土壌に散布することで、雑草の種子の発芽や根の生育を抑制する除草剤。
雑草の種類に応じた除草方法
スズメノカタビラ
スズメノカタビラは、秋に発芽し春にかけて成長する一年草の雑草です。 葉が成長しきらない時期は芝生との見分けがつきにくく、見落としてしまいがちです。 根は浅いですが、土の中に株を作るため繁殖力が強く、気づいたときには一面に広がっていることも少なくありません。 スズメノカタビラは様々な発芽パターンがあり、正確な発芽時期を特定することが難しいので、除草剤散布のタイミングが重要になります。
効果的な除草方法
- 土壌処理剤: スズメノカタビラは、地表面に芽が出る出芽深度が比較的浅く、根の発達も遅いため、土壌処理剤が有効です。 秋のスズメノカタビラ発生前にトレファノサイド乳剤か同粒剤を処理します。
- 茎葉処理剤: 発生してしまったスズメノカタビラには、茎葉処理剤も効果的です。 特に、トリビュートODは、低温期でも安定した茎葉処理効果が期待できます。 晩秋(11月以降)にトリビュートODとスペクタクルフロアブルを組み合わせて使用すると、高い効果を長期間維持できることが確認されています。
メヒシバ
メヒシバは、日本全国の畑や道路など、身近な場所でみられる一年生雑草です。 春に出芽し、夏から秋にかけて大きく成長します。 乾燥・暑さ・寒さ・湿度のすべてに強く、どこにでも生えるという特徴を持ちます。 また、アレロパシー作用を持つため、他の植物の生育を阻害する可能性があります。
効果的な除草方法
- 除草剤: メヒシバは種子で増えるため、発芽する前に土壌処理剤で駆除するのが効果的です。 散布のタイミングは雑草が発芽する前の3月と10月頃です。
- 代表的な芝生専用除草剤: シバキープ、アージラン、シバゲン、ザイトロン
- イネ科に有効な除草剤: ラウンドアップマックスロードAL
- 刈り取り: メヒシバは冬になって葉が枯れても、株が生きていればまた再生します。 そのため、根元から刈り取るのがおすすめです。 鎌を土の中へ突き入れるような感じで、根本から確実に刈り取りましょう。
- 耕起: 湛水するとメヒシバの発芽率が著しく低下します。 田畑輪換によって耕種的に防除することもできます。
オヒシバ
オヒシバは、メヒシバと同様に、道路などの身近な場所でよくみられる一年生雑草です。 春~夏にかけて大きく繁殖し、8~9月ごろには穂を付けます。 引き抜きにくく、踏みつけにも耐える強力な生命力が特徴です。 近年、グリホサート系の除草剤に抵抗性を示すオヒシバも出現しており、注意が必要です。
効果的な除草方法
- 除草剤: オヒシバの除草には「ナブ乳剤」が最適です。 ナブ乳剤は、茎葉処理により高い殺草効果を発揮します。 特に、オヒシバに代表されるイネ科の雑草に優れた効果が期待できます。 有効成分であるセトキシジムが、イネ科雑草に対して脂肪酸の生合成を阻害し枯殺することで、除草効果を発揮します。 根まで枯らして再生能力も奪うため、何度も除草作業を行う必要がありません。 グリホサート抵抗性を持つオヒシバにも効果を発揮します。
- 刈り取り: オヒシバは種子で増えるため、芝刈り機で刈り取ると種が飛び散ってしまいます。 種子ができるより前の段階で、できるだけ早く刈り取ることが重要です。
シロツメクサ
シロツメクサ(クローバー)は、マメ科の多年生雑草です。 春から秋にかけて黄色い花を咲かせます。 地中深くまで根を張らせて高い繁殖力を発揮するため、一度根付くと駆除が困難です。
効果的な除草方法
- 除草剤: シロツメクサを根本から駆除したい場合は、除草剤の使用がおすすめです。 芝生の中に繁殖したクローバーも選択制の除草剤を使用すればクローバーだけを狙って枯らすこともできます。
- 芝生に影響の少ない除草剤: MCPP液剤 、ザイトロンアミン液剤
- MCPPはオーキシン型と呼ばれる植物ホルモン作用を持っており、植物ホルモンを攪乱し成長の妨げを行います。 細胞分裂異常により除草活性を有するフェノキシ酸系の除草剤になります。 除草しにくいとされるスギナやクローバー、カタバミなどだけにピンポイントに狙って除草できます。
- 防草シート: 防草シートは外観や美観を損なう代わりに薬品などを使用するリスクは考えなくていいので安全に防草できます。 砂利を上から敷くなどで工夫すればおしゃれに見せることもできます。
- 手作業での除草: 手作業で除草をしたい場合、軍手と園芸用のフォークやスコップを用意するといいでしょう。 雨上がりなどの土が柔らかいタイミングを見計らって土ごとクローバーを持ち上げる要領で抜き取ると根本から除草できます。 クローバーは春の暖かくなる頃の4月などに活発になります。
カタバミ
カタバミはクローバーによく似た葉を付ける多年生雑草です。 春から秋にかけて黄色い花を咲かせます。 地下茎が残っていると、そこから再生してしまいます。 根っこが切れないようにスコップで掘り出し、株を丸ごと抜いてしまいましょう。
効果的な除草方法
- 除草剤: カタバミの駆除には、除草剤の使用がおすすめです。 地中深くまで効果が届くグリホサート系の除草剤を選んで、根っこから除草するようにしましょう。
- 芝生に影響の少ない除草剤: MCPP液剤
- 手作業での除草: カタバミは手作業でも除草ができます。 カタバミの根は土の中でつながっているので、できるだけ切れないように取り除きます。
- 砂利: 庭や駐車場などでは、砂利を厚めに敷くことでカタバミの発生を抑えることができます。 砂利を敷くと、光が遮られるため、雑草の種が発芽しにくくなります。 また、光合成を妨げることで、成長が遅くなり、除草が楽になるでしょう。
芝生の生育を促進し雑草の発生を抑える方法
芝生が健康に育つことで、雑草の発生を抑えることができます。
芝刈り
定期的な芝刈りは、芝生の密度を高め、雑草が生えにくくする効果があります。 芝生は放っておくと上に伸び、横には広がりません。 伸びた部分を刈るだけで芝生の密度は高まっていきます。 芝刈りの頻度は、芝生の種類や生育状況によって異なりますが、一般的には、生育期である5~9月は少なくとも月4回、春・秋は伸び具合によりますが、2~3週間に1回くらいは刈っておいたほうが良いでしょう。 また、芝丈を少し高め(3cm~位)に設定して刈るなら、雑草が伸びにくい状態を保つことができます。
施肥
芝生は、生育に必要な栄養素を肥料から吸収します。 特に、肥料の三大要素である窒素、リン酸、カリウムは植物が育つ上で欠かせません。 窒素は芝生の葉の成長を促進し、リン酸は根の生育を促します。 カリウムは、芝生のストレス耐性を高め、病気や乾燥に強くなります。 施肥の時期は、3月頃、6月頃、8月頃の3回が基本です。 窒素(N):リン酸(P):カリウム(K)=8:8:8程度の芝生用の肥料を1平方メートル当たり30g程度撒きます。
除草剤
除草剤を使用することも、雑草対策として有効です。芝生に影響の少ない除草剤を選び、適切な時期に散布することで、芝生を傷めずに雑草を除去することができます。 以下の表に、日本芝に使用できる除草剤と、それぞれの除草剤が効果を発揮する雑草の種類を示します。
除草剤名 | 対象雑草 |
---|---|
シバゲンDF | イネ科、カヤツリグサ科、一年生および多年生広葉雑草 |
グリーンアージラン液剤 | イネ科雑草、広葉雑草、キク科、タデ科 |
MCPP液剤 | 一年生広葉雑草、スギナ、クローバー |
ザイトロンアミン液剤 | 広葉雑草、シロツメクサ、チドメグサ |
シバキープAL | 一年生広葉雑草、スギナ |
芝生の密度を高めるための方法
芝生の密度を高めることは、雑草の発生を抑制する上で非常に効果的です。密度の高い芝生は、地面を覆い尽くすため、雑草の種子が発芽する余地を与えません。また、日光を遮断することで、雑草の光合成を抑制し、生育を阻害する効果もあります。芝生の密度を高めるためには、以下の方法があります。
- サッチング: サッチングとは、芝生に堆積した枯れ葉や刈りカスを取り除く作業です。 サッチが堆積すると、水はけや通気性が悪くなり、芝生の生育が阻害されます。また、病害虫の発生源となることもあります。サッチングを行うことで、これらの問題を解消し、芝生の生育を促進することができます。
- エアレーション: エアレーションとは、芝生に穴を開ける作業です。 エアレーションを行うことで、土壌の通気性や排水性が向上し、芝生の根の生育が促進されます。また、土壌中の微生物の活動が活発になり、芝生の生育に必要な栄養分の供給が促進されます。
- 目土: 目土とは、芝生の表面に薄く土を敷く作業です。 目土を行うことで、芝生の根を保護し、乾燥や寒さから守ることができます。また、芝生の表面を平らにする効果もあります。
保温・保湿シート
芝生の生育を促進するために、「保温・保湿シート」を使用する方法もあります。 保温・保湿シートは、芝生の地温を保ち、乾燥を防ぐ効果があります。特に、冬場の寒さや乾燥から芝生を守るために有効です。保温・保湿シートを使用する際は、通気性が良く、日射しを通すものを選びましょう。
結論
雑草のない美しい芝生を維持するには、芝生の健康的な生育を促すとともに、適切な除草方法を組み合わせることが重要です。芝刈りや施肥を適切に行い、芝生の密度を高めることで、雑草の発生を抑制することができます。 また、発生してしまった雑草には、手作業での除草や除草剤などを用いて適切に対処しましょう。 この記事で紹介した情報が、皆様の芝生管理に役立つことを願っています。ソースと関連コンテンツ